オナベの名前のコンプレックス。性同一性障害にとって改名はリスクの無い治療法

名前はその人の身体の性別がすごくわかってしまう。
それ故に、性別違和を感じている人はその名前で呼ばれるだけで、否定されているように感じてしまう。

例えば日本では男の子だと翔太・大輔なんかはすぐに男の子ってわかるし、
女の子だと優子・穂香とかもそう。

最近流行っている、葵、遥、皐月なんて名前であれば男女どちらとでも捉えられるし、そう言った子は楽だったかもしれません。

私の今の名前は「鈴木優希」ですが
産まれた時の名前は「鈴木英理子」でした。

どう聞いても女の子の名前で、特に「子」なんていうのは基本的に女の子につける名前です。
自分も「葵」とか「優」とかどちらにも捉えられる名前が羨ましく、そのことを親に責めたこともあります。今思えばとても申し訳なく思う。

でも、それも仕方ないはず親は子が性同一性障害(性別違和)やトランスジェンダーになるなんて、生まれてきたときには思いませんから。

性同一性障害にとって名前の性別はとても敏感

性同一性障害の人にとって、自分の心の性別に合わない名前で呼ばれることは心が痛くなります。

女性が自分は男だと心に言い聞かせても、エリコって呼ばれたら一気に現実に引き戻されます。
見た目を男らしく、振る舞いを男らしくしているのに、エリコって呼ばれてしまったら、やっぱり自分はどれだけがんばっても女なんだと思ってしまって嫌なのです。
自分が性別違和である事を周りに知られて馬鹿にされているような気もしてしまいます。

見た目が完璧じゃなく、見た目で気づかれたとしても致し方ないと思うけど、名前というのは一気に現実に引き戻されます。

だからこそ、名前を変えるというという行為は性同一性障害の人にって心が救われる行為の一つなのです。

改名という行為はリスクがほぼ無い治療である

名前を変えるというのは性転換みたいに身体的リスクがないため、生きていく上で命に関わるリスクはほとんど無いと言っても過言ではありません。
そして、金銭的リスクもとても少ないものになります。

しいていうのであれば、「元の名前を失う」ということぐらいでしょうか。
戸籍上の改名をしてしまうと、元の名前に戻すことやもう一度改名することは難しくなります。

それを除けば、かかるリスクに対して精神的満足度がとても高い行為になります。
名前ってとても大事で、私が改名前に性同一性障害のガイドラインに沿った治療を受けるために通っていたGID(性同一性障害)専門外来がある大阪医科大学付属病院では通称名での診察券がもらえました。
それが凄く嬉しくて今でも大切に保管してあります。

改名は戸籍上と通称名の2種類ある

改名と聞くと難しいものと思われるかもしれませんが、ここでいう改名という行為は二つの意味があります。
一つは戸籍上の改名をすること、これをすると世の中全てのことに堂々とその名前で生きることができます。
ただし、家庭裁判所への手続きが必要であり、その変更する理由に正当性や、病院でのトランスジェンダー診断など、手間が多くかかります。
そして、変えてしまうと、やっぱり戻すということはかなり難しくなります。。

もう一つは通称名を名乗ってしまうこと。通称名とはあだ名、芸名、源氏名みたいに自分のもう一つの名前を使うことです。
こちらは法的な効力はないのでちゃんとした書類などには使えませんが、日常生活では使っても支障がありません。
例えば、
・会社の許可をもらい名刺や名札に使う
・友達に呼んでもらう
・お店の予約を通称名でする
・インターネットで名乗れる
・手紙の宛名として使う

と言ったようなことができるようになり、日常の多くをその名前で生活することができるようになります。
※契約関係は伝えた上で通称名を使えるところもあるようです。

まずは、通称名を名乗ってみて、それで精神的にどう感じるかを試してみるのが良いと思います。満足いってから戸籍上の改名に乗り出しましょう。
この通称名を使い続けることは前述の「戸籍上の改名」をすることにも重要になってきます。

性同一性障害が戸籍上の改名をする方法とは

改名までの流れを大まかに説明をさせていただきます。
※法律の専門家では無いので参考程度にお考えください。詳しくは行政書士などに相談いただくと良いです。

まず、改名はすぐにできるものでなく、①家庭裁判所での許可手続き②市区町村役場へ届出、が必要となります。

ここで大切なのが「家庭裁判所」に許可をもらわないといけないこと。
要は裁判所が、「この改名は正当性があるものか」をちゃんと「審判」をするものであるということです。
だれでも書類一つですぐに改名ができるわけではありません。
名前を簡単に変えられちゃうと、それによる犯罪も起きてしまいますからね。

そして性同一性障害における正当性はGID専門医における「性同一性症という診断」がされていることで、これがいちばん重要です。

それに加え前述の通称名も使用していた実績が必要となります。
一般的な改名、例えばキラキラネームからの改名などは通称名を長い年月使用している必要がありますが、性同一性障害の場合は1〜2年でも改名ができる可能性が高いです。これは「医師の診断書」が重要されているからです。

まとめると、

  1. 通称名を使って生活をする
  2. ジェンダークリニックなどでGID専門医の診察及び治療
  3. 診察・治療を進めて専門医から性同一性障害(トランスジェンダー)と診断される
  4. 性同一性障害の診断書・通称名をした証拠の書類・裁判所の書類などを用意して家庭裁判所に申し立て
  5. 改名を良しとするかの審判がされる
  6. 許可が出たら役所に届出

といったのが、一般的な流れです。
細かくは人により変わるところもあるので、行政書士さんなどに聞いてもらうと良いと思います。

 

改名、通称名はどうやって決めるといいの?

自分の好きな名前にすれば良いと思います。
「けんすけ」「しゅうぞう」「しょうた」みたな、男っぽい名前に憧れる人もいます。
「はるか」「るい」「さつき」みたいな男女どちらともとれる名前の方が、ギャップが少なくて安心なんて人もいます。
漢字は姓名判断で画数を元に考えてみてもいいでしょう。

僕の場合は「新之助」「虎太郎」「慎太郎」など古風な男らしい名前に憧れました。
他には、LGBT改名あるあるで、元の名前の一文字を使うというのも考えました。
「英理子」の一文字を取って「えりお」「ひでお」「おさむ」とか。

結局どれもピンとこず、今の本名「優希」は独立前に働いていたBAR開業の時に決めた源氏名をそのまま使っております。
キャバ嬢・ホステスからの転身だったこともあり、お客様に違和感のないよう、まだ女っぽい見た目で童顔だったため、当時のオーナーにアドバイス頂き、中性的な「ゆうき」に決めました。
そして、姓名判断、画数をみて漢字に「優希」を選びました。

改名したのは、25歳ごろで性別も変更前だったけど、名前を変えただけで僕のストレスはかなり減りました。
戸籍上の性別さえ考えなければ、胸の切除と改名だけでかなり「生きやすく」なると思います。

私の経営するオナベバーVenusのFTM・性同一性障害・トランスジェンダーのスタッフに、身体にダメージを与える医療的治療を勧めることはしませんが、改名は求めていれば後押しをしています。

改名とは、健康的観点から見ても「副作用」「リスク」が限りなくない治療だと私は思います。
名前に悩んでいる人はまず、通称名から名乗ってみても良いのではないでしょうか。

鈴木優希

幼少の性同一性障害に気づく。中学、高校、美容師、キャバクラと女性として過ごすが、20代の時に20代の時に性転換をし男性へ。
スナックでの勤務を経てを経てオナベバーVenus開業。
Venusを経営しつつ、現在、社会福祉団体などでの講演、「LGBT理解の為の講演活動」、「オンラインセミナー活動」、「オナベバーなど開業支援事業」を展開しています。

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